風向風速は気象観測の基本観測要素です。
気象学、鉄道や道路などの公共交通インフラの安全管理、環境モニタリング、自然エネルギー関連など様々な用途で使用されております。
風向風速計のタイプや特徴は多岐にわたるため、用途にピッタリの製品を見つけるのは決して容易ではありません。
お客様の用途に合わせて絞り込み検索ができる製品比較表をご用意していますので、ぜひ適切な風向風速計選びにご活用ください。
風向風速計は風の速度とその方向を測定するための機器です。
風向風速は様々な方法で測定することができますが、代表的な3つの測定原理を説明します。
これらの測定原理と特徴を踏まえたうえで使用目的に最適な機器の選択を行うことが重要になります。
三杯矢羽根型風向風速計は風向計、風速計それぞれ分かれたタイプの風向風速計になります。
三杯風速計は3つのカップが垂直に取り付けられ、風によりカップが回転して計測する装置です。風が吹くとカップが風を受けて回転します。回転速度は風速と比例し回転数から風速に換算できます。
矢羽根型風向計は風が吹くと矢羽根が風を受けて、風が吹いている方向へ向きます。どの方向に向いているかにより、風向を計測します。
プロペラ型風向風速計は風向計と風速計が一体になった構造のセンサです。
風が吹くと回転するプロペラをセンサ前部に持ち、回転速度は風速と比例し回転数から風速に換算できます。センサ後部には尾翼をもち、センサを風が吹く方向へ向けます。どの方向に向いているかにより、風向を計測します。
日本国内では現在主流のタイプになります。
超音波式風向風速計は超音波発信受信間の双方向の超音波の伝達時間を計測することにより風向風速を演算測定します。
風が吹くと双方向間の伝達速度の差が生じ、その時間差からベクトル分解をすることにより風向、風速を求める事が可能になります。センサは稼働部分を持たないため、計測値に時定数の影響がなく、リアルタイムの風の変化を観測することが可能になります。またベアリングなどの消耗品もなくメンテナンスは不要となります。
ヒータエレメントを内蔵することができるため、雪氷地域での凍結の問題に対応できます。今後主流の風向風速計のタイプになることが期待されています。
風向風速計には様々なタイプ、信号の種類、価格帯があり、ご自分の用途にあうセンサを選択するのは容易ではありません。
計測目的にあった風向風速計の選定方法を説明いたします。
風向風速は気象業務法で規定されている観測項目です。
観測データの公開方法により気象庁検定を受けなければなりません。
どのような目的でご使用するかにより検定の有無が決まってきます。
無電源地帯での観測、雪氷地帯での観測など設置環境によりタイプを選定する必要が出てきます。
価格帯もハイエンドからローエンドと予算に応じた選定も可能です。
下記の製品表にて機器を絞り込み検索することができます。どのような条件で計測したいかクリックしてください。※複数選択可能
型番 | 画像 | タイプ | 特徴 | 製品仕様 ※1電源 | 出力 | ヒーターオプション | 検定取得可否 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
CTC-WS1 | 三杯 | 風況調査用 風速のみ | 不要 | パルス/電流 | あり | MEASNET | |
CYG-3002 | 三杯矢羽根 | 経済型 | 不要 | パルス/ポテンショ | なし | 不可 | |
CYG-3002VM | 三杯矢羽根 | 経済型 | 要 | 電圧 | なし | 不可 | |
CYG-3002LM | 三杯矢羽根 | 経済型 | 要 | 電流 | なし | 不可 | |
CYG-3102 | 三杯 | 経済型 風速のみ | 不要 | パルス/電圧/電流 | なし | 不可 | |
CYG-3302 | 矢羽根 | 風向のみ | 不要 | ポテンショ/電圧/電流 | なし | 不可 | |
CTC-WD1 | 三杯 | 風況調査用 風向のみ | 不要 | ポテンショ、電流 | あり | MEASNET | |
CYG-5103 | プロペラ | 経済型 高精度(一般観測用) | 不要 | パルス/ポテンショ | なし | 気象庁 | |
CYG-5103VM | プロペラ | 経済型 高精度 | 要 | 電圧 | なし | 気象庁 | |
CYG-5103LM | プロペラ | 経済型 高精度 | 要 | 電流 | なし | 気象庁 | |
CYG-5108 | プロペラ | 耐久仕様 | 不要 | パルス/ポテンショ | なし | 気象庁 | |
CYG-5108V | プロペラ | 耐久仕様 | 要 | 電圧 | なし | 気象庁 | |
CYG-5108L | プロペラ | 耐久仕様 | 要 | 電流 | なし | 気象庁 | |
CYG-9101 | プロペラ | デジタル出力 | 要 | 電圧、RS-485(いずれかを選択) | なし | 不可 | |
CDC-ATOMS41W | 超音波 | 複合機観測型(無電源地帯向け) | 不要 | Bluetooth | なし | 不可 | |
CYG-5305 | プロペラ | 微風用 | 不要 | パルス/ポテンショ | なし | 不可 | |
CYG-5305V | プロペラ | 微風用 | 要 | 電圧 | なし | 不可 | |
CYG-5305L | プロペラ | 微風用 | 要 | 電流 | なし | 不可 | |
CYG-5501LM | プロペラ | 防爆 | 要 | 電流 | なし | 不可 | |
CCP-Portable | 超音波 | 小型、ポータブル、専用アプリ | 不要 | Bluetooth | なし | 不可 | |
CCP-Portable Mini | 超音波 | 小型、ポータブル、専用アプリ | 不要 | Bluetooth | なし | 不可 | |
CCP-ULP | 超音波 | 小型、高コストパフォーマンス | 要 | RS-485、UART、電流 | なし | 気象庁 | |
CYG-86000 | 超音波 | 標準型(一般観測用) | 要 | 電圧、電流、RS-232/485 | あり | 気象庁 | |
CYG-86004 | 超音波 | ヒーター付 | 要 | 電圧、電流、RS-232/485 | あり | 気象庁 | |
CYG-86106 | 超音波 | 海用 | 要 | 電圧、電流、RS-232/485 | あり | 気象庁 | |
WMT-700 | 超音波 | ハイエンド型 | 要 | 電圧、電流、RS-232/422/485、SDI-12 | あり | 気象庁/MEASNET | |
CYG-91000/91500 | 超音波 | デジタル、コンパス付(オプション) | 要 | RS-232/422/485、SDI-12 | なし | 気象庁 | |
CYG-81000/81000RE | 超音波 | 3成分 標準型 | 要 | 電圧、RS-232/485 | なし | 気象庁 | |
C-CSAT3B | 超音波 | 3成分 フラック計測向け | 要 | SDM、RS-485、USB、CPI | なし | 不可 | |
CTC-US3D-H | 超音波 | 3成分ヒータ付き(雪氷地域向け) | 要 | 電圧、電流、RS-422/485 | あり | MEASNET | |
CYG-92000 | 超音波 | 標準型(一般観測用) | 要 | RS-232/422/485、SDI-12 | なし | 不可 | |
CVS-WXT530 | 超音波 | 複合機観測型 | 要 | RS-232/422/485、SDI-12 | あり | 気象庁 | |
CYG-9106 | プロペラ | デジタル出力、海用 | 要 | 電圧、RS-485(いずれかを選択) | なし | 不可 | |
CYG-5108MA/CYG-5108-8214P | プロペラ | 海用 | 不要 | パルス/ポテンショ、電圧、電流 | なし | 気象庁 | |
当てはまる製品がありません。 絞り込み項目を変更してください。 |
製品仕様 ※1
ヒーターオプション:風向風速計を凍結から保護し、風の情報を正確に測定します。
検定:風向風速計などの測定機器を評価するMEASNETによる検定取得や、気象庁検定が必要な場合に対象となる製品があります。
気象庁検定の詳細についてはこちらをご参照ください。
風向風速計を設置する場所は、風の流れを妨げないことが重要です。
建物や障害物からの乱流の影響などを最小限に抑えるために、十分に離れた場所に設置することが推奨されます。
また、設置する高さも重要であり、一般的には高さが高くなるほど風速値は上昇します。一般気象観測では周りの建物の影響に左右されないように6~10メートル高に設置します。
参考:設置場所について
風向風速計の取り付け方法は、使用する風向風速計の種類や設置場所によって異なります。一般的には、風向風速計を堅固な構造物(例えば、マストやポール)に取り付けます。風向風速計を固定するためのブラケットやクランプが提供されることがありますが、取り付けの際には風向風速計sが水平に配置されるように注意する必要があります。
風向風速計の設置に関しては使用する機器の取り扱い説明書やメーカのガイドラインを参照することも重要です。
参考:引き込みポール電柱などへの取付
風向風速計からデータ収集システムや表示装置に接続する必要があります。適切な防水接続を確保し、信号のノイズ干渉を最小限に抑えるように配線を行ってください。特に受信装置のアースグランドとセンサ側のアースグランドが共通になるようにしてください。
2重アースは問題となる可能性があります。ケーブルをポールなどに固定する際は風でケーブルが動かないようにしてください。ケーブルがポールなどと擦れて劣化する可能性があります。
風向風速計を正確に運用するためには定期的な校正とメンテナンスが必要です。風向風速計のメーカの指示に従って、定期的な点検と調整を行い正確な測定を確保してください。特に回転式タイプのベアリングなどの消耗品は定期的な交換を推奨いたします。
超音波式風向風速計は消耗品がないため、基本メンテナンスは不要です。
各タイプの風向風速計は様々な出力信号があります。
デジタル出力、アナログ出力それぞれに対応した記録器、表示器が必要になります。
また観測値の統計(平均値、最大値、最小値など)を行う場合、風向に関しては特別な計算方法が必要になります。風向は0…360度なため、通常の平均式は使用できないためです。
一般的に行われている方法としては、ベクトル、単位ベクトル、スカラーなどの計算式が使用されます。
風向風速の入力に対応した記録器は専用の計算式があらかじめ備わっており、記録データから別途計算する必要がありません。
風のベクトル計算について詳細はこちら
気象庁が気象業務法にて定める法律です。公に対して計測値を公開する場合は気象庁検定が求められます。
三杯矢羽根、プロペラ式風向風速計が回転を開始する風速です。起動風速以下の風速は計測できません。
超音波式は基本起動風速がありません。
三杯矢羽根、プロペラ式風向風速計は起動風速以上の風が吹いていても瞬時に回転を開始できません。ある程度風が風向風速計を通り過ぎてから回転を開始します。距離乗数はその回転を開始するまでに通り過ぎた距離になります。
吹上、吹下げ風での計測時、プロペラは低め、三杯は高めに出力ある傾向があります。また三杯は風向変化時に影響を受けません。日本アメリカではプロペラ、欧州では三杯矢羽根が主流になります。風力発電などIEC規定では三杯矢羽根式が求められます。
時定数がなく瞬間値を計測できることが最大の利点です。また消耗品がなくメンテナンスフリーを実現しています。可動部分がなくヒータオプションモデルは雪氷地帯に有効です。欠点はほぼないですが、使用には電源が必要になります。
気象庁が定める風向風速の計測方法については4Hzサンプリングの3秒移動平均値を瞬時値と定めています。一般的に風観測は10分間の統計値が用いられます。航空気象では2分値が使用されます。
最大風速とは統計値の最大値になります。最大瞬間は瞬時値の最大値になります。
国内の本質安全防爆規格のモデルはございません。CYG-5501LMは、アメリカのUL913 Class I, Division 1, Groups A, B, C, D本質安全防爆規格を満たす風向風速計です。
CYG-86004、CVS-WMT700などの超音波式を推奨いたします。プロペラ式ではCYG-5108、CYG-5108MAなどがあります。
設置環境やモデルによりライフタイムは変わってきますが、三杯矢羽根、プロペラ式は数年ごとにベアリングの交換が必要になります。超音波式モデルはおおよそ10年位が交換の目安です。
ポテンションメータ式は構造上不感帯ができてしまいます。
室内の気流は微風速なため、屋外用の風向風速計ではなく室内用に特化した風向風速計を使用します。主に熱線式風速計が挙げられます。熱線式風速計では風向の計測は不可となります。
IECの規定により、三杯矢羽根、超音波式での計測が求められます。MEASNETでの検定が多くの場合求められます。MEASNET検定についてはクリマテックまでお問い合わせください。
気象庁検定が取得できるモデルは検定がないものに比べ、実質の精度が保証されたモデルになります。また公共のデータとして観測値を使う場合は気象庁検定が必要になります。
モデルにより起動風速以下の風速を計測できる場合もありますが、基本仕様に定められている風速以下は参考データになりますので、精度保証はされていません。
残念ながら対応は不可になります。
受信システムにより、適正な出力方法を選定してください。
簡易的に行う場合は、CCP-Portableでスマホやタブレットを表示器として使用する方法があります。
通常の風観測は平行風(2次元)のみの観測になりますが、フラックス観測などでは鉛直方向(3次元)の計測も求められます。その場合は3成分の超音波式風向風速計にて計測を行います。
一般的に地上高6から10mに設置します。また設置場所周辺に障害物がないことが望まれます。障害物がある場合は障害物の高さの10倍の距離の確保を推奨いたします。
1年ごとの点検、2年ごとの校正を推奨いたします。三杯矢羽根、プロペラ式は数年ごとのベアリング交換を推奨いたします。
メンテ方法、校正についてはクリマテックにご相談ください。
風向風速計の取り付けは水平が重要になります。また方位は真北、磁北などどちらを採用するかあらかじめ選定してください。
風のデータは一般的に10分間の統計値が採用されています。風向はベクトル、単位ベクトル、スカラーなど統計方法により値が変わってきます。
定期的なメンテナンス、校正を推奨いたします。簡易的な方法としては東西南北に風向計を向けて値を確認します。
気象学、環境モニタリング、建築物の設計など、さまざまな分野で重要な役割を果たす風向風速計についてご紹介しました。
風向風速計の選定・設置方法、ガイドラインについて、より詳しい内容を知りたい場合は、ぜひお問い合わせくださいませ。
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