温湿度センサーさまざまなセンサの特徴

風向風速計 風向風速計
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温湿度センサーは気象観測の基本要素を測定する重要な機器です。
本ページでは、白金抵抗温度計やサーミスタなどの温度センサー、静電容量型や赤外線ガス分析計などの湿度センサーの特徴を詳しく 解説します。さらに、絶対湿度と相対湿度の違い、露点の概念、そして測定精度を高めるシェルターについても紹介します。

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1. 白金(Pt)抵抗温度計 (RTD: Resistance Temperature Detector)

白金(プラチナ)の電気抵抗が温度に比例して変化する特性(抵抗値が高温で高くなり、低温で低くなる)を利用しています。0℃時の抵抗が100ΩのPt100と1000ΩのPt1000があります。精度は比較的高く、気象庁検定が取得可能です。気象観測では最もよく使われています。印加電圧をかけて3線式または4線式のブリッジ計測で抵抗測定から温度を求めます。導線の抵抗値がばらつく環境では4線計測をお勧めします。

白金抵抗温度計

表:温度とPt100とPt1000の抵抗値の関係

温度とPt100とPt1000の抵抗値の関係
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2. サーミスタ (Thermistor)

温度に対する電気抵抗が大きく変化する(抵抗値が高温で低くなり、低温で高くなる)半導体材料を使用したセンサです。小型で応答速度が速く安価であることが特徴です。印加電圧を与えて返りの電圧を計測することで温度を計測します。精度はPtに比べて高くないため、安価に計測したい場合や参考程度に計測したい場合に使用されます。

サーミスタ

3. 熱電対(Thermocouple)

2種類の異なる金属導体の両端を接続して閉回路を作ると両端の温度差によって電流が発生する現象(ゼーベック効果)を利用して、計測対象の温度を計測するセンサです。最も安価で構造がシンプルなため、素線があれば簡単に作ることができます。2種の金属の組み合わせにより、計測レンジが異なり、T,K,E等の名称がついています。熱電対を延長するためには熱電対コネクタが必要となります。

熱電対1
熱電対2
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4. 赤外線温度センサ (焦電素子)

物体はその温度に応じた赤外線を放出しています。物体からの放射は温度が高いほど多く、放射される赤外線エネルギーの量は温度の4乗に比例します。赤外線を計測できる素子(焦電素子)を使って非接触で物体の表面温度を計測できるようにしたものが、赤外線温度センサです。
計測対象の物体は黒体であることを前提としているため、黒体に近い放射率(ε)を持つ物体の場合高精度な計測が可能です。一方で、黒体放射からはずれた放射率を持つ物体の場合、精度は落ちてしまいます。

放射率の一例
黒体:1 土:0.95 砂:0.9 水:0.92 雪:0.83
*太陽光の反射が入ると正しく計測できないことがあります。

赤外線温度センサ (焦電素子)
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5. 水銀温度計

水銀の膨張を利用したガラス管内の温度計です。2015年に国連環境計画の外交会議で採択された「水銀に関する水俣条約」を受け、2021年1月1日以降の製造・輸出入が禁止されています。水銀切れを起こすため、衝撃に弱く航空機等による輸送ができません。
これらのセンサはそれぞれ特性や適用範囲が異なるため、用途に応じて適切なものを選択することが重要です。

水銀温度計
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1. 静電容量型湿度センサ (Capacitive Humidity Sensor)

2つの電極の間に湿度に応じて誘電率が変化する材料(通常はポリマー)を挟んだ構造になっています。湿度によって静電容量が変化し、それを測定します。感部が汚れが付着したり、結露状態が続くと劣化が進みます。劣化を防ぐためには加温プローブ付きのセンサが非常に有効です。応答速度は早くはありませんが、一般気象観測目的であれば問題ありません。電気式湿度計または露点式湿度計として気象庁検定の取得が可能です。センサには電源が必要です。

静電容量型湿度センサ
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2. 赤外線ガス分析計 (NDIR:Non-Dispersive Infrared Absorption)

水蒸気が特定の波長の光(赤外線)を吸収する性質を利用して空気中の水蒸気量を計測します。高速(数十Hz)での計測が可能で一般的にはCO2濃度も同時計測することができ、フラックス観測によく用いられています。機器は静電容量型に比べて高額でサイズも大きくになります。数ヶ月に一度、標準ガスを使った校正が必要となります。

赤外線ガス分析計