
概要
FHF05は熱流計測を検討している方にとって最適なセンサーです。FHF05シリーズは5種のサイズおよび感度係数の違うモデルがあり、目的に応じて選択いただけます。すべてのモデルは柔軟性があり、T型熱電対が一体になっており、熱伝導率への依存を減らすためのサーマルスプレイダー*を備えています。定格温度範囲は–70〜+120°Cです。 FHF05は、伝導、放射、対流からの熱流を測定します。オプションで、5つのモデルすべてに黒のBLKステッカーと金のGLDステッカーを使用して、放射と対流による熱輸送を個別に決定できます。
*スプレイダーの詳細についてはこちら
アプリケーション
・断熱材の評価
・空調(冷暖房の効率)の評価
・工業プラントプロセスの管理、評価
・CAE(Computer Aided Engineering)熱流体解析シュミレーションの評価
計測原理
熱流センサはそれ自身を通過する熱流束を計測します。熱流束はW/m2の単位で表現されます。FHF05はセンサが貼り付けられた場所の代表的な熱量を出力します。
FHF05の感部はサーモパイル(熱電錐=熱電対の集まり)でできています。サーモパイルはセンサの表と裏の温度差を計測します。FHFは電源を必要としないパッシブセンサであり、表と裏の温度差は通常非常に小さいために小さな電圧出力となります。センサには固有の係数がつけられていて、出力された電圧に係数を掛けることで熱流へ変換できます。

異種金属で構成される熱電対が大量に埋め込まれています(①、②)。一つの熱電対はセンサの表と裏にある温接点と冷接点の温度差に従った電圧を発生します(④、⑤)。直列接続された熱電対により信号が増幅されます。定常状態では熱流束(⑥)はセンサの表と裏の温度差とセンサ本体の熱伝導率(③)と比例関係になります。
スプレーダーについて
熱流計の共通の問題点として校正時に使用するヒートシンクの素材以外での使用時に感度係数が変わってしまう短所が知られています。スプレイダーはこの感度係数の問題を解決する機能になります。
校正はヒートシンクに熱流計を張り付けその上部に決まった出力するヒータをのせヒートシンクに伝わる熱流を計測して個々の感度係数を決定します。通常校正用ヒートシンクはアルミが使用されています。アルミへの熱流を計測する場合は問題はありませんが、アルミ以外では計測素材の熱抵抗の違いから計測誤差が大きくなる可能性があります。

優位点はこちら
下記はHukseflux社のFHFシリーズのスプレイダー有と他社製のスプレイダーなしでのアルミ、ガラス、プラスティックでの計測における不確かさのグラフになります。FHFシリーズ(青)はガラス、プラスティックでの不確かさに比べ、他社製は不確かさは大きくなっていることがわかります。

取付例
FHF05シリーズは高い柔軟性を持ち、半径7.5mmまで曲げることができます。


取り付け方法
正しい計測のために計測対象とセンサ間には空気が入らないようにしてください。
①熱伝導性両面テープを用いて取り付ける。
②熱伝導性グリスを塗り、上から熱伝導性テープで固定する。
のいずれかをおすすめします。熱伝導性テープはガードバンド部分にのみ最低限の量を貼り付けるようにしてください。
製品例 (お客様でご用意お願いします)



(カプトンテープやポリイミドテープなど)
設置例 (感部にテープが接触しないよう注意してください)

価格
スクロールすることができます
型番 | ケーブル長 | 定価(税抜) |
FHF05-SS | 2m | ¥50,000- |
5m | ¥58,000- | |
10m | ¥67,000- | |
FHF05-S | 2m | ¥50,000- |
5m | ¥58,000- | |
10m | ¥67,000- | |
FHF05-M | 2m | ¥84,000- |
5m | ¥91,000- | |
10m | ¥100,000- | |
FHF05-LG | 2m | ¥100,000- |
5m | ¥108,000- | |
10m | ¥117,000- | |
FHF05-L | 2m | ¥150,000- |
5m | ¥158,000- | |
10m | ¥167,000- |
仕様
スクロールすることができます
計測項目1 | 熱流 |
計測項目2 | 温度 |
温度計 | タイプT熱電対* |
サーマルスプレイダー | 付属 |
最小曲げ半径 | 7.5mm |
ケーブル耐荷重量 | <1.6kg |
感部サイズ(wxb) |
FHF05-SS: 10 x 10 mm FHF05-S: 15 x 30 mm FHF05-M: 50 x 50 mm FHF05-LG: 15 x 85 mm FHF05-L: 85 x 85 mm |
センサ熱抵抗 | 11×10-4 K/(W/m²) |
センサ厚さ | 0.4×10-3 m |
校正の不確かさ | ±5%(k=2) |
計測範囲 | (-10 to 10) x 10³ W/m² |
各モデルの感度係数(典型値) |
FHF05-SS: 1 x 10-6 V/(W/m²) FHF05-S: 3 x 10-6 V/(W/m²) FHF05-M: 13 x 10-6 V/(W/m²) FHF05-LG: 7 x 10-6 V/(W/m²) FHF05-L: 50 x 10-6 V/(W/m²) |
非対称性 | <2% |
温度範囲 |
継続使用:-70 to +120℃ 短時間使用:-160 to +150℃** |
IP等級 | IP67*** |
ケーブル長 | 2m |
オプション |
5or10mケーブル 黒ステッカー 金ステッカー |
*温度計測不確かさ:読み値の5% ℃ 詳細はマニュアル参照
**-160℃以下でお使いの場合お問い合わせください
***継続的な水中での使用は推奨いたしません
センサー結線
スクロールすることができます
線色 | 出力 | 測定 |
赤 | +熱流出力 | 電圧 |
黒 | -熱流出力 | |
茶 | +熱電対温度 | T熱電対(CC) |
白 | -熱電対温度 |
大きさ、構成

FHF05-S/M/L外形図
①受感面(スプレイダー付)
②ガード
③温度センサー(T熱電対)
④ドット(表面表示)
⑤コネクタブロック
⑥ケーブル(標準2m)

FHF05-SS/LG外形図
①受感面(スプレイダー付)
②ガード
③温度センサー(T熱電対)
④ステッカー(S/N、感度)
⑤コネクタブロック
⑥ケーブル(標準2m)
推奨ロガー

HIOKI 熱流ロガー LR8432
- 熱流センサで熱の量と流れを測定
- 温度・電圧も測定可能
- 測定データをUSBメモリに記録し、手軽にPCに持っていくことができます!長期間に渡る測定は、信頼のCFカードに安心記録!
- アナログ入力10ch絶縁、最高感度10mV
- 全チャネルで10msの最高サンプリングが可能
- 生波形と演算後の波形を2つ同時に記録(熱貫流率などの波形演算)
- ダブルゲージで2本の目盛りを表示可能

HIOKI メモリハイロガー LR8450-01 (無線LAN搭載モデル)
- 無線LAN搭載モデル/直結ユニット,無線ユニット増設で最大330ch
- 圧力など各種センサーの出力電圧を1msサンプリングで測定
- ひずみゲージを直接接続して最速1msサンプリングで測定
- インバータなど高電圧・高周波周辺でも安定測定、ノイズの影響を大幅に低減
- 無線ユニットを使えば信号線の配線長を最短にでき、トラブルを防止
- 無線LAN搭載のロガーを使えば、離れた場所のデータをPCで観測可能
オプションステッカー
放射計測、対流計測




熱流測定は常に放射、伝導、対流の影響を受けています。放射及び対流測定を別々に計測したい場合、「黒」「金」ステッカーオプションを使用することにより個々に計測することが可能になります。
「黒」は放射および対流に反応します。
「金」は放射を反射する為、対流のみに反応します。よって下記の計算が成り立ちます。
放射測定 + 対流測定 = 黒
対流測定 = 金
放射測定 = 黒 ― 金
各ステッカーは標準の熱流センサに後から貼ることも可能です、ご注文時に指定いただければ貼付して出荷も対応できます。貼付面はセンサ裏側と統一させていただきます。センサ表側に貼付ご希望の場合は、ユーザご自身にて貼付してください。
注意
粗面、低熱伝導率物への取付は校正条件とは異なるので要注意
校正条件(20°C 1350W/m2)と著しく異なる高温、低温環境、日射、熱放射を受ける面での使用にも注意。別の熱放射、対流の影響がある場合、オプションの「黒」「金」ステッカーにより放射、対流による熱流の切り分けが可能。
センサと測定物の熱抵抗について
測定対象物の熱抵抗による測定誤差
素材 | 厚さ (mm) | 熱抵抗 K/(W/m2) | センサモデル | センサ熱抵抗 K/(W/m2) | 計測値/真値 |
木材 | 50 | 0.31 | FHF05 | 0.0011 | 1.00 |
コンクリート | 100 | 0.1 | FHF05 | 0.0011 | 0.99 |
スチール | 5 | 0.001 | FHF05 | 0.0011 | 0.48 |
Q&A
スクロールすることができます
熱流流速とは? |
熱流束とは、単位面積当たりに熱エネルギーが表面を通過することで、単位はW/m^2です。その測定は、熱管理、エネルギー変換、材料科学などのプロセスにおいて極めて重要です。 |
なぜ熱の移動(熱流束)が起きるの? |
熱流束は温度差によって生じます。熱力学の法則によれば、熱は常に高い温度から低い温度へと流れる。この熱の流れは、システムや物体が熱平衡に達するまで続きます。 |
熱流束の測り方は? |
熱流センサーは、表面を通過する熱エネルギーの量を測定し、通常は温度も測定します。ユーザーは、熱源とシンクの間など、熱伝達が存在する経路にこれらのセンサーを設置し、熱が通過すると、センサーは1平方メートルあたりのワット[W/m2]を測定します。これらのセンサーは、薄くて繊細なフィルム状であったり、堅牢なハウジングを持つセンサーであったりすします。 熱流束測定は、熱の強さだけでなく方向も示します。これは熱設計を最適化する上で極めて重要となります。 |
熱流束の計算式は? |
熱流束は、熱の伝わり方(伝導、対流、輻射)によって異なる公式を用いて計算することができます。 |
熱流束と熱流量(ヒートフロー)の違い |
しばしば熱流量と熱流束を混同されます。両者は熱力学において関連する量であるが、その意味は異なります。熱流束は単位面積当たりの熱伝達率で、単位はワット毎平方メートル(W/m2)である。熱流束には大きさと方向の両方がある。特定の面積をどれだけのエネルギーが通過するかを測定する局所的な測定である。表面を通して測定するため、熱流密度とも呼ばれることがある。 しかし、熱流量ヒートフローは、ワット[W]単位で測定される伝達された熱の総量を指す。これはスカラー量であり、伝達されるエネルギーの大きさのみを測定することを意味する。ヒートフローは、1秒間に表面積全体を通してどれだけの熱が移動するかを示します。例えば、建物を暖房する場合、ヒートフローは1秒間に建物に入るエネルギーと建物から出るエネルギーの合計になります。 つまり、熱流束は強さと方向、熱流量は総量を表す。どちらも時間単位である。どちらも熱の移動を伴うシステムを理解する上で重要ですが、目的は異なります。 |
熱流束と温度の違い |
熱流束と温度は関連しているが、熱物理学では異なる性質を持っています。熱流束とは、熱エネルギーが1秒間に単位面積を移動する速度のことである。単位時間あたりにどれだけのエネルギーが、どの方向に移動するかがわかる。 これに対して温度は、熱の移動がなくても存在できます。温度は粒子の平均運動エネルギーに関係し粒子の運動エネルギーが大きいほど、温度は高くなります。 |
テープやグリスは販売していますか?お薦めはありますか? |
アプリケーションにより異なるため、推奨はございません。 取り付け対象によりどういった方法が適しているかはお客様の方で判断をお願いします。 |
センサに圧力をかけても問題ありませんか? | 4.8barまでは問題ございません。 |
温度補正は必要ですか? |
校正温度(20℃)と計測部温度に差がある場合、温度補正が必要です。 Φ = U/(S∙(1 + 0.002∙(T – 20))) Φは熱流束(W/m²)、UはFHF05シリーズの電圧出力(V)、Sは20℃での感度(V/(W/m²)、TはFHF05の温度です。 感度Sは、製品証明書とケーブルの端に記載されています。 |
温度計はどこにありますか? | サーマルスプレイダー下部、センサ裏面にあります。 |
防爆対応品でしょうか? |
ATEXおよびJPExには非対応です。 |
校正証明書は付属しますか? | メーカーの校正証明書が付属します。構成はASTM C1130 – 21に従ったトレーサブルな機器を使って工場にて行われております。 |
貼り付けた場所に温度ムラがある場合の出力はどうなりますか? | その場所の平均的な熱流量が出力されます。 |
推奨ロガー以外に適合するロガーはどのようなものがありますか? | 熱電対およびミリボルト単位の電圧が計測可能なロガーであれば特に条件はありません。センサのモデルと想定される熱量、許容できる分解能を考慮してお客様の方でご判断ください。 |
半導体タイプの熱流センサとの違いは何ですか? | 半導体タイプは計測素材による差が大きくなっています。 また、FHFシリーズは半導体タイプより耐久性が高いことが実験で示されています。これはセンサを曲げた時に顕著で、本来曲げ角にかかわらず内部抵抗の変化がないものが理想ですが、半導体タイプは曲げ角により内部抵抗が変化するものがあるためと考えられます。 |
熱抵抗の低い素材に使用できますか? |
FHF05の熱抵抗は0.0011[K/(W/m2)]となります。測定物の熱抵抗が低いものに対して測定の誤差が出ます。 例:5mm厚鉄板の熱抵抗0.001[K/(W/m2)]では測定結果は0.48%(測定値/真値)となります。 コンクリート100mm熱抵抗0.1[K/(W/m2)]では測定結果は0.99となりほぼ真値に近い値となります。 |
校正の推奨頻度は? |
ISO9001においては2年が推奨です。弊社までセンサを送り返していただいてからメーカー(オランダHukseflux社)での校正となります。センサの状況によってはお受けできない可能性もありますので、営業担当へお問い合わせください。 |
自分で校正することは可能ですか? | 校正済みのセンサを校正対象のセンサと並べて計測することで比較校正が可能です。同じ型式のセンサを使い、200W/m2以上の熱量で24時間以上かけて校正することをお勧めします。詳細は取扱説明書を参照ください。 |
デモ品はありますか? | デモ品はございますが、数に限りがありますので詳細はお問い合わせフォームよりご連絡ください。 |
レンタル品はありますか? | レンタル品はございません。 |
関連動画
■熱流センサ概要
■CHF-FHF05の取り付けと動作の様子